横浜地方裁判所 昭和57年(行ウ)11号 判決 1988年3月09日
原告
古市滝之助
右訴訟代理人弁護士
松村彌四郎
被告
東京国税局収税官吏
新藤博一
右指定代理人
浦野正幸
外八名
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 昭和五六年一一月二七日横浜市旭区上川井字堀谷二一六三番五において、保土ヶ谷税務署収税官吏大蔵事務官訴外山本敏が原告に対し、別紙物件目録(一)、(二)各記載の物件についてした差押処分及び同事務官訴外蓮見進弘が原告に対し、別紙物件目録(三)記載の物件についてした差押処分は、いずれも無効であることを確認する。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
二 請求の趣旨に対する答弁
主文同旨
第二 当事者の主張
一 請求原因
1 保土ヶ谷税務署収税官吏大蔵事務官訴外山本敏は原告に対し、国税犯則取締法二条一項に基づき、昭和五六年一一月二七日横浜市旭区上川井字堀谷二一六三番五において、原告所有の別紙物件目録(一)、(二)各記載の物件(以下「本件一の物件」という。)を差し押さえ、また、同事務官訴外蓮見進弘は原告に対し、右同規定に基づき同日同所において、別紙物件目録(三)記載の物件(以下「本件二の物件」という。)を差し押さえた。
2 保土ヶ谷税務署収税官吏大蔵事務官訴外山本敏及び同事務官訴外蓮見進弘の右各差押物(以下「本件差押物件」という。)に対する一切の権限は、昭和五六年一二月一八日、国税犯則取締法一一条四項に基づき被告に承継された。
3 本件差押物件に対する差押(以下「本件差押処分」という。)は、次のとおり、違法なもので無効である。
すなわち、本件差押処分は、原告が酒税法九条一項による免許を受けないで酒類の販売をしたことを理由としてなされたものであるが、販売場所在地の所轄税務署長の免許を受けなければ酒類の販売業をすることができない旨の酒税法の右規定は、以下のとおり憲法二二条一項に違反し、無効なものであるから、本件差押処分も無効である。
(一) 憲法二二条一項による職業選択の自由の保障
憲法二二条一項は、狭義の職業選択の自由、すなわち職業の開始、継続、廃止における自由のみならず、選択した職業の遂行、つまり職業活動の内容、態様における自由も保障している。
酒税法九条及び一〇条に規定する営業の許可制度は、単に職業活動の内容、態様に対する規制にとどまらず、狭義における職業選択そのものを直接制約する最も徹底した規制にほかならないから、これを合憲と認めるためには強い合理的根拠を要する。
ところで、営業の許可制が合憲であるとして是認されるためには、第一に、規制の目的自体が公共の利益に適合する正当性を有すること、第二に、目的と規制手段との間に合理的関連性が存在すること、第三に、規制によつて失われる利益と得られる利益との間に均衡が成立することが必要である(最高裁判所昭和四七年一一月二二日大法廷判決、同昭和五〇年四月三〇日大法廷判決、同昭和四九年一一月六日大法廷判決)。
なお、被告は後記のとおり、酒類販売免許制度は税収確保という積極目的に基づき営業の自由を規制するものであるから、立法府の裁量的判断を尊重し、当該法的規制措置が右裁量権を逸脱し著しく不合理である場合に限り、これを違憲であるとして、その効力を否定し得るものである旨主張する。
しかし、積極目的による人権の規制は、経済的弱者等の人権を実質化するために規制を加える場合であり、消極目的による人権の規制は、自由な経済活動から生ずる弊害を防止するための規制、さらにいえば、弊害から生ずる国民の人権に対する侵害を予防するための規制である(最高裁判所昭和四七年一一月二三日判決)ところ、かかる観点からみれば、酒類販売免許制度は、自由販売による共倒れ等の弊害によつて国家財政に生ずる「滞納の予防」といつた消極的な性格のもので、立法者に広汎な裁量の認められる租税政策(いかなる租税を課するかという問題)や税収の増大を図るためのものではなく、いわんや具体的な経済的弱者の人権を実質化するような積極的な規制目的を有しているものではない。税収確保の目的をもつて積極目的ということはできないし、立法府の裁量にも服しないものであり、被告の主張はその前提において失当である。
(二) 規制目的における正当性の欠如
被告は、後記のとおり、酒税法における免許制度が酒税収入の安定確保を図る目的を有しているから憲法二二条一項の「公共の福祉」に合致すると主張する。
しかし、以下のとおり、右主張は論拠を欠き失当である。
(1) 憲法二二条一項の「公共の福祉」による規制は、社会生活における個人の生命身体財産の安全を保障し、経済活動がもたらす弊害を除去ないし緩和する目的(警察的諸規則)及び憲法が全体として企図している福祉国家的理想のもとに、積極的に社会経済の均衡のとれた調和的発展を企図して一定の規制措置を講ずる目的のためのみ許される(最高裁判所昭和三〇年一月二六日大法廷判決等)のであつて、租税政策その他種々の政策の名のもとに恣意的、便宜的な制約が許されるものではない。
このことは、職業選択の自由及びこれに基づく国民の経済活動の自由の保障が表現の自由・精神の自由の保障とともに、わが憲法における基本権保障の中核部分をなしていること及びその歴史的沿革からしても明らかである。
すちわち、職業選択の自由、営業の自由は、日本国憲法、ワイマール憲法一一一条、ボン基本法一二条、世界人権宣言二三条一項に明定するほか、憲法上の規定の有無を問わず世界の市民社会を支配する普遍的原理であり、また、租税(日本では冥加金と呼ばれた。)徴収の目的のために自由な経済活動が拘束され、営業が許可制のもとに置かれてきた封建制への抵抗を通して確立されてきたものであつて、租税徴収の確保を目的とした許可制は、わが憲法が基盤とする自由経済と福祉国家の原理とは全く相い容れないもので、むしろ、近代憲法が打破してきた前近代的・封建的拘束にほかならず、酒税収入の確保を理由とする職業自由の規制は、その目的において日本国憲法が許容しないものである。
また、仮に、租税収入確保の目的による制約が許容されるならば、国民の経済活動の自由は根本から覆滅される。
すなわち、酒税収入確保を目的とした営業許可制が憲法上正当なものであるならば、他の間接国税との間に径庭はないから、その収入確保を目的とした営業許可制もまた正当視されることになり、国民の経済活動の殆どすべての領域が徴税対象とされている現代社会において、国民が従事する殆ど全ての職業を国家の許可制のもとにおくことも憲法上許容されることとなつてしまい、その結果、国家の「租税政策」次第ではどのようにも左右され、憲法二二条一項の基本権の保障は空文化されてしまうのであつて、「酒税収入安定のため」という目的が職業選択の自由に対する規制根拠として憲法上決して許容されないことは明らかである。
(2) 酒類販売免許制度は昭和一三年に導入されたが、酒税確保のために導入されたものではなく、しかも右当時と今日では時代背景を異にし、全く不要のものである。
すなわち、酒類販売免許制度は、昭和一二年の日華事変の勃発を契機に昭和一三年四月国家総動員法が制定され、戦時経済統制法制が本格的に展開された時期に設けられた制度であり、当時酒類販売業のみならずあらゆる小売業の整備・再編が求められ、最終的には、昭和一六年に国家総動員法に基づく企業許可令制定により、殆ど全ての小売業(四四三種の小売業が指定された。)が許可制の下に置かれ、昭和一七年には企業整備令が制定され、事業の譲渡命令等による強権的な、「私有財産否定」の企業再編成が行われたのであつて、酒類販売免許制度も酒類の統制を目的に導入されたのである。
また、酒類販売免許制度は、酒税確保のためではなく、政治的な妥協の産物として導入された疑いが強いのである。
すなわち、酒類に対する物品税は造石税であつたものが、昭和一三年から支那事変特別税法により庫出課税に変わり、昭和一五年には庫出課税による酒類の物品税と造石税方式の酒税とが併用され、昭和一九年には酒税が庫出課税方式に一本化されたが、その間、酒造業者は、商取引慣習上販売代金の回収期間に長期間を要する実情からして、酒税支払いの資金繰りに窮するとの不安から、庫出課税により短期間に納税することに反対し、政府は、これを懐柔するための妥協策として酒類販売免許制度を導入したと考えられるのである。
したがつて、酒類販売許可制度は戦時経済統制を背景に政治的妥協の産物として導入されたものであるから、当時とは全く前提の異なる現行憲法下でその存在意義を有しないのである。
(3)(イ) 被告は、後記のとおり、別表7ないし11を掲げ、酒がいつの時代にも万人必需の嗜好品であつたことから、酒税が各種租税の中でその税率及び税額が高く、国家財政において重要な地位を占めている旨主張する。しかし、今日では、担税物資の増加により、酒税の国税に占める比重も大幅に低下し、例えば昭和五六年度でみると、酒税は租税・印紙収入の六パーセント、税額にして一兆九三七〇億円、国税全体の4.1パーセントに過ぎず、他の間接税収入との関係でも、昭和五七年度に、酒税は一兆七六七〇億円、揮発油税は一兆六二四〇億円、物品税は一兆二三四〇億円となり、間接税収入九兆四八一六億円の18.6パーセントを占めるに過ぎず、揮発油税や物品税と変わらないもので、往時のように特に重視しなければならない租税ではなくなつている。
(ロ) 被告は、酒税の税率が高い旨を主張するが、被告の掲げる別表8の「製造者販売価格(税抜)に対する税額割合」と題する表は、酒税額と生産者税抜き販売価格とを比較するもので、酒類販売免許制度の可否を論ずるには相当でなく、小売価格に占める酒税額の割合を取り上げるべきところ、昭和二五年四月当時の小売価格及び酒税負担率は次のとおりであつたが、昭和五五年一月ないし同年八月当時(但し、みりんは昭和五四年三月当時である。)は次のとおりで、近年における主要酒類の小売価格の酒税負担率は決して高率ではなく、これを理由に酒類販売免許制度を採用する正当性はない。
昭和二五年四月当時
番号 区分 小売価格(円) 酒税(円) 負担率(%)
1 清酒特級 一一七五 九二五 78.7
2 清酒一級 九五〇 七三三 77.1
3 清酒二級 六四五 四六三 71.7
4 合成清酒 五〇〇 三五八 71.6
5 みりん 一〇〇〇 七六三 76.2
6 焼酎甲類 四五〇 三一四 59.7
7 ビール 一三二 102.14 77.4
8 ウイスキー特級 一三五〇 八六四 64.0
昭和五五年一月ないし同年八月
番号 区分 小売価格(円) 酒税(円) 負担率(%)
1 清酒特級 二二〇〇 738.18 33.6
2 清酒一級 一六〇〇 385.56 24.1
3 清酒二級 一二〇〇 154.44 12.9
4 合成清酒 八八〇 112.5 12.8
5 みりん 一〇七〇 121.86 11.4
6 焼酎甲類 八八〇 96.12 10.9
7 ビール 二四〇 101.97 42.5
8 ウイスキー特級 二一五〇 1017.5 47.3
(ハ) 被告は、酒税の税率が高く、酒類製造業者の負担する納税額も高額になる旨を主張するが、別表9は、ビール、ウイスキー業界の上位五社だけを取り上げ、焼酎のように税率の低い商品を取り上げず、また、別表11は自動車の物品税が低いことを上げるが、そこで売上高に計上されている金額の半分以上は非課税とされている輸出品を含み、輸出品の殆どない酒類と比較しているのであり(例えば、日産自動車の場合、間接税の売上に占める割合は、4.6パーセントから一一パーセント〔輸出品を控除する。〕になる。)、さらに、別表11は、石油業者について全売上高に占める間接税の割合を問題にしているが、揮発油だけの売上高に占める揮発油税を問題にすべきであり、そうすれば丸善石油の場合には37.1パーセントとなるのである。
また、仮に酒類製造業者の売上高に占める酒税負担率が高いとしても、小売価格の五六パーセントが税金といわれ、最も税率の高いたばこについてさえ、昭和五九年のたばこ事業法の改正において、税収確保は全く問題とされず、従前の小売業者を保護する一種の社会政策的配慮から、小売人指定制度を廃止し、自由化することを当分の間猶予し、許可制度としているのであり、税負担率の高いことをもつて免許制度を合理化することはできないのである。
(4)(イ) 被告は後記のとおり、酒類販売業者が酒類の流通過程において、重要な地位にあり、その乱立及び経営の悪化は、酒類製造業者の納付すべき酒税の回収を困難にし、ひいては酒税の確保を危うくする旨主張するが、右主張は失当である。
被告は、酒類販売業者一場当たりに換算される年間酒税額が一〇〇〇万円になるとして、その多額であることを強調するが、国税庁が酒類販売業の免許基準として採用している「年間販売基準数量」をみると、大都市の全酒類卸業では一場当たり七二〇キロリットルとされているのに対し、D地域の一般小売業では一場当たり僅か六キロリットルに過ぎず、被告の挙げる一場当たり一〇〇〇万円の酒税額は、年間販売量が七二〇キロリットルのところも六キロリットルのところも一緒にして平均したものであるから、その数字にはなんの意味もない。
(ロ) 被告は、現在の酒類の需要が伸び悩んでいる状態にあり、かかる状態で酒類販売免許制度を廃止すると、他業種に比べてマージン率の高くない酒類販売業者、特に中小零細業者の存立がおびやかされ、ひいては酒税の確保を危くする旨主張する。
しかし、酒類小売業者の粗利益率が低いとしても、酒類小売業は、他の一般小売業と比べて販売・管理費比率・売上高対人件比率が低いから、経営効率は高く、また、酒類小売業にはリベート及び添付という悪習慣行があり、これは一般に会計上正規の処理がなされていないため統計上には表れてこないが、これを計算に入れると酒類小売業の粗利益率は三〇パーセントにも達するのであり、被告の粗利益率が低いとの主張は、表面的、形式的なものに過ぎず、失当である。
また、酒類の需要が伸び悩んでいる点についても、別表13によれば、昭和三一年度が一三七万六〇〇〇キロリットルであつたものが、昭和五六年度には六八六万四〇〇〇キロリットルに達し、その消費量が伸び悩んでいるとはいえず、また、この間に酒類小売業の販売数も、昭和三〇年一一月二八日当時九万六四五一店であつたものが、昭和五五年三月三一日当時で一五万五七四九店に増加し、酒類の消費量と相関して増加しているのであり、さらに、国民一人当たりのアルコール飲料消費量についてみると、次のとおり、日本は世界各国に比して低位にあり、今後、酒類の消費には大幅な伸びが期待でき、酒類販売量が伸び悩んでいるとはいえず、被告の主張はその前提において失当なものである。
昭和五四年における国民一人当たりアルコール飲料の消費量
フランス 15.4リットル
西ドイツ 12.8リットル
イタリア 12.7リットル
スイス 10.6リットル
カナダ 9.0リットル
アメリカ 8.7リットル
イギリス 7.4リットル
日本 5.1リットル
(ハ) 酒税の納税業務者は、昭和一三年当時、零細な清酒製造業者が中心であつたが、今日ではビール、ウイスキー等の製造業者である大手企業が大半を納税するようになり、酒税徴収上の不安は全くない。
すなわち、昭和二八年ころから消費構造の変化により、清酒の割合は昭和一三年当時酒類の65.8パーセントであつたものが、昭和五五年には21.8パーセントに低下し、これに代わつて、昭和一三年当時22.1パーセントに過ぎなかつたビールが昭和五五年には66.8パーセントに、1.6パーセントに過ぎなかつたウイスキー、ワイン等が6.3パーセントに増加し、酒税金額においても、昭和五四年度でみると、清酒が二八八二億五九八九万六〇〇〇円であるのに対し、ビールは七五五七億九四一六万一〇〇〇円、ウイスキーとブランデーは三八五五億六五〇四万一〇〇〇円(このうちウイスキーが三五七二億四一四八万一〇〇〇円)となつた。
そして、ビール業界の市場占有率は別表1のとおり、キリン、サッポロ、アサヒ、サントリーの四社で一〇〇パーセントを独占し、ウイスキー業界の市場占有率は別表2のとおり、サントリー、ニッカの二社で九二パーセントが独占されていて、昭和五七年度における酒税一兆七七一二億円のうちキリン、サントリーの二社のみで、一兆〇一五〇億円(57.3パーセント)を納付しているのである。
また、清酒業界も業者の近代化、企業体質の強化、業界構造の改善を図るべく、昭和三八年九月、中小企業近代化促進法の指定業種として構造改善事業に取り組み、昭和四四年二月には、清酒業界ぐるみで第二次近代化を実施し、さらに、昭和五二年四月一一日第三次の近代化を実施し、その結果企業集中化が計られ、昭和五〇年代の清酒業界の上位五〇社の市場占有率は別表3のとおり、昭和五〇年に大手五〇社で市場占有率56.6パーセント、昭和五四年に58.1パーセントとなり、上位一〇社で昭和五〇年に全出荷量の35.6パーセント、昭和五四年に三七パーセントを占め、上位一〇社のブランド別市場占有率は別表4のとおりとなつているのである。
そして、これら大手五〇社には、酒類販売業者の動向に左右されて酒税を滞納する不安はないから、残る41.9パーセントの清酒業者が納める約一一五三億〇三九五万円(全酒税の約7.8パーセント)のためだけに酒類販売免許制が存続しているという不可解な結果となつており、このことからも酒類販売免許制度には正当な目的がないことが明らかである。
(5) 被告は、後記のとおり、酒類販売免許制度の付随的効果として、アルコール中毒者の発生や飲酒運転などを防止し、致酔飲料としての酒類の販売秩序が保たれる旨を主張するが、アルコール依存症は医学的見地から厚生省の所管事項であり、また、飲酒運転による事故防止は刑法、道路交通法が規定して取り締まるところであつて、酒類の秩序ある販売とはなんら関係がなく、いわんや税務署長による酒類販売免許制度の存続とは全く関係がなく、右理由により酒類販売免許制度が人権規制の正当な目的を有するとはいえないのである。
また、被告は後記のとおり、酒類販売免許制度が酒類の価格安定に寄与する旨主張するが、しかし、その根拠は全く不明であり、むしろ、免許制度を撤廃し、酒類販売業を自由競争にさらすことによつてのみ酒類の価格を引き下げ、酒類の価格安定をもたらすことは、自由競争の下における初歩的経済理論であつて、被告の主張は失当である。
(6) 以上のとおり、酒類販売免許制度による「酒税の保全」という目的は、憲法二二条一項の保障する職業自由を規制する正当な理由とはならないばかりでなく、今日その目的自体が微々たるものに過ぎず、右制度を採用する正当な理由とは到底認められないものである。
(三) 規制手段における合理的関連性
職業の許可制度が合憲とされるためには、単に目的自体において正当であるのみでは足らず、そのために採用される規制手段が目的達成のために合理的必要性(目的との十分な関連性)を有することを要するが、酒税法九条一項、一〇条各号による免許制は、その規制手段、態様において著しく合理性を欠き、前記目的達成のために必要的手段であるとは認められないのである。
(1) 酒税を納付すべき義務者は、酒税法六条によれば酒類の製造者又は酒類を保税地域から引き取る者であつて、酒類の販売者ではないから、酒税徴収確保を図るには、酒類製造者又は酒類引取者を免許制度のもとにおくことで足り、酒類販売業者を免許制のもとにおく合理性はない。
なお、被告は後記のとおり、酒類代金が販売先に停滞することなく順調に酒類製造者に回収されることが酒税収入の安定に資するから、そのために健全な酒類販売業者の存在が必要で、これが酒類販売業者を免許制度のもとに置く理由であるとする。
しかし、酒類製造業者も一個の企業人であるから、自己の製造した酒類を販売する相手方の資力、信用について、一般の企業と同様な注意を払つて取引するはずで、かつ、そのような注意能力も有するはずであり、現在物品税を課税されている自動車、貴金属、家電製品、毛皮、化粧品などの業界において物品税徴収に不安を生じていないことからも明らかで、ことさらに政府が酒類製造業者のみを経済的弱者として後見的に保護しなければ、酒税収入の安定を害するとは認められないうえ、酒類販売免許制度ができた昭和一三年当時は造石税で酒類の製造により課税されたが、現行法は庫出税であり、庫出或いは保税地域から引き取る時に課税されるのであるから、酒類製造業者は、酒類を製造しても担税能力に応じて庫出数量及び庫出価格を調整すれば、酒類販売業者を選別しなくとも酒税納付に不安はなく、しかも、酒類業界のうちビール、ウイスキー業界は完全に近代化され、清酒業界も六〇パーセントは近代化され、かつ、今後酒類販売業者として新規参入してくることが予想されるスーパー、生協、農協などの大型量販店では十分に担税能力を有し、酒類代金の回収に不安はない。
また、酒税法一〇条は、酒類の販売業免許申請者がその経営の基礎が薄弱であると認められる場合を免許拒否の事由としているが、同法一四条における酒類販売業免許の取消事由中には右の如き場合が掲げられていないから、一旦酒類販売業の免許を得た者は、たとえその後経営の基礎が薄弱となつても免許を取り消されることはなく、健全な酒類販売業者の存在が酒税収入の安定のために必要不可欠であるとは酒税法自体が認めていないのである。
さらに、納税義務者の資産上ないし資金上の安定を図るためにこれと取引する者の営業をすべて免許制度のもとにおくことが許されるならば、この世の中の営業で、免許制度の対象とならないものはなくなつてしまうことになり、被告の右主張は、憲法二二条一項のもとにおいて、およそ成立する余地のないものである。
(2) 酒類販売免許制度は、酒税の滞納率を低下させているものではない。
酒税の滞納率を比較するには、同じ課税形態をとつているもので、販売免許を採用しているものといないものとを比較することを要し、所得税等の直接税の滞納率とを比較して検討しても意味はない(もともと間接税の滞納率は直接税よりも低いものである。)。
また、物品税には、小売業者が納税義務者である第一種物品と製造業者が納税義務者である第二種物品があり、第一種物品の滞納率が第二種物品より高いことは明らかである(反則検査等により更正処分を受けた物品税の内訳によると、第一種は約2.5パーセント、第二種は約0.2パーセントである。)。
そこで、第二種物品である砂糖消費税と酒税を比較すると、別表5のとおり、必ずしも酒税が低いとはいえないのであり、酒税が販売免許制度を採用しているから、他の類似の間接税と比較して滞納率が低くなつているとはいえないのである。
仮に酒税の滞納率が他の物品税又は砂糖消費税よりも低いとしても、酒税には、他の間接税と異なり製造免許制度を採用して製造者を手厚く保護し、酒税の滞納率を防いでいるのであるから、それは製造免許制度の効果であつて、酒類販売免許制度によるものではなく、このことは、酒類販売免許制を導入する以前から酒税の滞納率が低かつたことからも明らかである。
(3) 被告は後記のとおり、酒税の逋脱防止のために、酒類販売免許制度が役立つている旨を主張するが、酒類販売免許制度によつて酒類販売業者まで規制するためには、酒類製造業者に対する種々の規制が酒税の逋脱防止に効果を奏しない場合に限り許容されるところ、現行酒税法は、酒類製造業者に対する規制が極めて厳しいため、現実には酒類製造業者が酒税を逋脱する可能性はほとんどないのである。
すなわち、酒税法は、酒税を確保するために、酒類製造者に対して申告書提出義務(三〇条の二)、各種事項の帳薄記載義務(四六条)、申告義務(四七条)質問検査、検定受認義務(四九、五三条)、承認を受ける義務(五〇条)、届出義務(五〇条の二)、酒税証紙貼付義務(五一条)を課し、その懈怠に対しては刑事罰をも規定(第九章)することによつて課税対象及び税額の把握に遺漏なきことを期し、また、国税庁長官、国税局長官又は税務署長は酒税保全のために必要があると認められるときには、酒類製造者に対し金額及び期間を指定して酒税につき担保の提供を命ずることができ、提供すべき担保がないときは、担保の提供に代えて酒税の担保として酒類の保存をも命ずることができる(三一条一項)旨を規定し、これを受けて同法施行令及び国税庁基本通達は、担保提供を命じうる条件、期間、担保物件の種類、物件評価の詳細について定めているのであり、さらに、酒税は、酒類製造業者がその製造場から酒類を移出した月の翌月末日までに納付しなければならないものとされていて(三〇条の四第一項・三〇条の二第一項)、極めて短期の納付期限が定められており、酒類製造業者の資産、信用等の変化による影響を受けないように配慮されているのであつて、酒税を逋脱しうる状況にはなく、むしろ、かかる厳しい規制自体の合憲性が疑問視されているほどなのである。
このように、酒税法並びにこれに基づく命令及び国税庁基本通達は、納付義務者から酒税徴収を安定して確保する目的のために二重、三重にわたる万全の方策を講じているのであるから、それに加えて、酒税徴収の確保を図るという名目のもとに、酒税納付義務者でもない酒類販売業者まで免許制度の規制のもとにおく必要性は全くない。
なお、被告は、酒類販売免許制度によつて、酒税の逋脱防止の規制が可能になつた旨主張するが、酒類販売免許制度を導入するまでもなく、営業開始申告義務や記帳義務などの規制によつて、酒税のの逋脱防止を達成しうるのもあり、現に他の間接税ではこのような規制でその目的を達成しているのであるし、酒類販売免許制度が即酒税逋脱に加担する人及び販売場の排除につながるものではなく、このことは、酒類販売業者に課されている質問検査受忍義務が「酒場、料理店その他の酒類を専ら自己の営業場において飲用に供することを業とする者」に課されていること(酒税法五三条)からも明らかである。
また、被告は、酒税だけが逋脱され易く、これが国家財産に与える影響が甚大であるかの如く主張するが、しかし、第一種物品税の対象となる宝石類は小売価格も高額で、その一五パーセントに物品税が課され、その税額も大きく、これが逋脱されると国家財政に与える影響が甚大であり、しかも「カバン屋」と呼ばれるセールスマンが物品税がかからないといつて販売している状態があるにもかかわらず、販売業者を免許制にせず販売業者証明制度を導入した(物品税法五条の二、三五条の二)だけにとどめているのであり、これは今日販売業者を免許制にすることが不可能で、酒類販売免許制度がきわめて特異な時代背景の下で初めて可能になつたことを裏付けるものである。
(4) 以上のとおり、酒類販売免許制度は酒税の確保を図るという目的との間に合理的関連性を欠き、目的達成のための必要的手段とはいえないのである。
(四) 比較考量
職業選択の自由に対する規制が合憲であるとして是認されるためには、第三の要件として、規制によつて得られる利益とこれによつて制限される職業の自由の性質、内容及び制限の程度を比較考量して、なお妥当性の認められることを要するが、酒税法による酒類販売業者の免許制度は、右の利益考量の要件においても著しく妥当性を欠くものである。
すなわち、現行制度は、前記のとおり、酒類製造者から酒税徴収を確保するための万全の措置を講じているのであるから、さらに酒類販売業者をも免許制度のもとに規制したとしても、これによつて国家に付加る利益は極めて僅少なものに過ぎないが、これに対して、免許制度のもとで不許可処分を受けた申請者は、希望する酒類販売業の開業自体が完全に抑制され、その職業選択の自由は全面的に剥奪され、その不利益の程度は著しく重大であつて、酒類販売業の免許制度は、それによつて得られる利益とそれによつて与える損害との均衡を著しく欠くものである。
よつて、本件差押処分の無効確認を求める。
二 請求原因に対する答弁
1 請求原因1、2の各事実は認める。
2 請求原因3前段のうち、本件差押処分が、原告の酒税法九条一項違反を理由になされたことは認め、その余は争う。
(一) 請求原因3(一)のうち、憲法二二条一項が職業の開始、継続、廃止のみならず選択した職業の遂行の自由をも保障したものであること、酒税法九条及び一〇条が職業選択の自由を規制するものであることは認め、その余は争う。
なお、職業選択の自由の制約については、これを消極目的による場合と積極目的による場合に分けて、その規制の合憲性を検討すべきものである。
すなわち、経済的自由権は、その歴史的過程をみれば、精神的自由権(良心の自由、信教の自由、表現の自由)と同じく絶対的保障を要する基本権として樹立されたものであるが、資本主義の発展に伴い資本主義経済の弊害の是正及び国民経済の均衡のとれた調和的発展という観点から、国家による積極的な介入が要請され、政策上の規制対象とされることになつたものである。
そのため、職業選択の自由は、すべての人権に内在するいわゆる内在的制約のほか、国家が経済的自由に対して規制を加える必要があるという歴史的要請から社会国家的立場に基づく政策的制約を受けるものと解されている(最高裁判所昭和四七年一一月二二日大法廷判決、同昭和五〇年四月三〇日大法廷判決)のである。そして、内在的制約は、他人の生命・健康への配慮、他人の人間としての尊厳への配慮、人権相互の調整等の観点から導かれる人権の限界であり、こうした観点からの人権の制限を消極目的の制限と呼び、他方、政策的制約は、経済的自由に対して積極的な政策目的のために加えられるもので、こうした観点からの制限を積極目的の制限と呼ぶのである。
両者は、具体的な規制制度の規制目的がいずれに属するかにより分けられ、その制度の合憲性を判断する場合の司法審査の基準が異なるものである。
積極目的の制限の場合には、規制目的において一応の合理性が認められ、また、規制の手段・態様においても、それが著しく不合理であることが明白でない限り、その規制は合憲であるが、消極目的の場合には、規制の手段・態様において、よりゆるやかな制限によつては規制の目的を十分に達成できないと認められることが合憲性の審査基準となる。
ところで、国は国民生活の安定の確保のみならず社会・経済の発展をも図るべき重大な責務を担つているのであるから、これらの責務を果たすために、これに要する経費を調達しなければならないことは当然であり、その経費が租税によつて賄われるのであるから、憲法は国の重要な機能として租税の賦課徴収権を認め(八四条、八六条、六〇条)、これに対応して国民の納税義務を明記しているのであり、また、租税確保のために、いかなる租税を課し、いかなる方法で徴収するかを立法府の政策的技術的な裁量に委ねている(八四条、租税法律主義)のであつて、酒税という税目もこの立法裁量によつて採用されているのである。
そして、酒類販売免許制度は、「酒税の保全」という基本目的のために「酒類の需給の均衡の維持」を図ることにあるから、立法府の租税政策に基づくもので、積極目的による人権の制限といえるのである。
したがつて、酒類販売免許制度における合憲性の司法審査の基準は、規制目的において一応の合理性が認められ、また、規制手段・態様においてもそれが著しく不合理であることが明白でない限り、合憲と判断されるべきである。
(二) 請求原因3(二)は争う。
なお、酒類販売免許制度の目的は、前記のとおり、「酒類の需給の均衡の維持」を図り、酒類販売者の経営の安定を通じて「酒税収入の確保」を図ることにあるが、右基本目的は、第一に、酒税の逋脱防止の目的、第二に、酒税の滞納防止の目的に分けて考えられ、いずれの目的も憲法二二条一項の「公共の福祉」に含まれるものである。
次に、被告は原告の主張に対し、以下のとおり反論する。
(1) 原告は、租税徴収の確保を目的とした許可制が、憲法の基盤とする自由経済と福祉国家の原理に反し、近代憲法によつて打破された前近代的、封建的拘束にほかならない旨主張するが、しかし、今日の酒税は、整備された近代的租税体系の一環をなしており、主要各国の多くが、別表6のとおり、酒税を賦課すると同時に免許制度を設けていることからして、右主張はこれらの事実を無視するものである。
また、原告は、酒税収入確保を目的とした営業許可制が憲法上正当であるならば、他の間接国税の収入確保をも目的とした営業許可制もまた正当視され、国民の従事する殆ど全ての職業を国家の許可制のもとにおくことも憲法上許容されることになる旨主張する。
しかし、租税目的により営業許可制を各種営業に極端に拡大させるという非現実的な状態を仮定して、現行の酒類販売免許制度の違憲性を主張すること自体が論理の飛躍であり、酒税法が、酒税の重要な地位及び高率税率のため密造酒等が横行しやすいという特別の属性に着目し、後記の合理的な範囲内における規制の手段・態様を採用して酒類販売免許制度を規定していることを無視しており、右主張は失当である。
(2) 酒類販売免許制度は、昭和一三年四月一日から実施されたものであるが、これを実施するについては、次の時代的背景があつたのである。
昭和一三年当時、酒類販売業者は二四万人から二五万人の多きに達していたことから、各業者間の販売競争は激化の一途をたどり、乱売に拍車がかかつて売行不振をきたす販売業者が次第に増加し、販売業者の倒産や名義変更は年間を通じて全業者数の三割にも達する状況になつた。一方、酒類製造業者もその影響を受けて売掛代金の回収に多大な困難を来たし、最盛期には約一万二〇〇〇人もあつた醸造業者は毎年二〇〇人程度のものが廃業を余儀なくされ、昭和一三年当時には七千数百人に激減した。
このような社会的、経済的な事情を背景として、政府は免許制度の立法化を図ることにし、「酒造税法中改正法律案」、「酒精及び酒精含有飲料税法中改正法律案」及び「麦酒税法中改正法律案」を国会に提出してその成立をみ、昭和一三年四月一日から同制度の施行をみたものである。
なお、原告は、酒類販売免許制度が国の臨時体制下における流通統制の一環として実施された措置であり、当初の目的は「酒税の保全」を目的としていなかつた旨主張するが、原告主張の統制は、戦時体制下における酒類の生産統制、配給統制等を指すものと考えられるが、そのような統制は、戦時体制下における原材料不足、酒類の製造激減に伴い、需給の調整と公正な配給を行うために昭和一六年ころから政府の行政指導及び酒類業団体の手によつてなされるようになつたものであり、酒類販売免許制度は、当時の衆議院議事速記録に見られる提案理由、朝日経済年史特輯の論評に照して明らかなように、「酒税の保全」を基本目的として、「酒類の需給の均衡の維持」を図るためのものとして昭和一三年に実施されたもので、原告の主張は失当である。
(3)(イ) 原告は、国税に占める酒税収入の割合が今日低下し、揮発油税や物品税と変わらないものになり、特に重視しなければならない租税ではない旨主張するが、酒税は、明治三〇年から昭和初期にかけて、租税収入の首位を占め、昭和一〇年度から昭和二五年度までの間は所得税に次いでほぼ二位を、昭和二六年度から昭和五八年度までの間は所得税、法人税に次いで三位を占めており、昭和五八年度国税収入予算額三四兆一〇二六億円に対し、酒税収入は一兆八六〇〇億円で、その占める割合は5.5パーセントとなり、我が国において、現在でも重要な地位にあり、極めて安定した収入をもたらしているのであつて、原告の主張は失当である。
(ロ) 酒税は、従量課税制度を原則とし、一部の酒類には従価課税制度を併用しているが、その税率及び税額は、別表7のとおり高率で高額なものとなつており、製造者販売価格(税抜)に対する税額割合も別表8のとおり高率となつているのである。
原告は、酒税率を問題とするならば、小売価格の中に含まれる酒税額の割合(小売価格の酒税負担率)を取り上げるべきであるとするが、酒税法は、原則として製造場移出課税制度を採用し、酒類の製造者を納税義務者と定め(六条一項)、しかも、酒類販売免許制度が酒類製造者の酒税納税義務の履行を担保する制度であるから、酒類販売免許制度の可否について酒税の負担率の面から論ずる場合には、納税義務者たる酒類製造者の納付すべき時点において、いかなる負担率の酒税をいかにすれば確実に納付し得るかという点に着目すべきであるのであつて、製造者移出価格(税抜)に対する税額の割合によつて、その負担率を算定するのが妥当なのである。
また、原告は、主要酒類として八品目の酒類を挙げ、これの昭和二五年四月当時と昭和五五年一月ないし八月当時の小売価格の酒税負担率を比較し、小売価格の酒税負担率が減少しているとしたうえで、酒税負担率は高率とはいえない旨主張する。
しかし、原告の主要酒類として挙げた八品目の酒類の課税移出数量及び課税額の酒類全体に占める割合は、次表のとおりであり、主要酒類といえる清酒、ビール及びウイスキー類の三品目(課税移出数量、課税額の各合計が全酒類の八〇パーセント以上を占める。)は、原告主張のとおり、その小売価格に占める酒税負担率は昭和二五年当時よりも低下しているものの、昭和五九年八月当時における製造価格に占める酒税負担率は、別表8のとおりであつて、同一課税制度を採用する物品税に比較して著しく高率であつて、単に負担率が低下したからといつて酒税が低率であるとはいえないのである。
file_3.jpg注 課税移出数量及び課税額は、昭和五四年度(五四・四〜五五・三)のものである。
(ハ) 酒税は、その税率が高いために別表8のとおり、酒類製造者販売価格(税抜)に対する割合が極めて高いため、酒類製造者の売上高に占める酒税額の割合も非常に高くなり、別表9のとおり、ビール、ウイスキーの製造者においては、酒税額がその売上高の約四五パーセントから約五七パーセントに及び、正に酒税を納税するために酒類製造業を営んでいるものといえる程になつているため、酒税は、消費者に税負担が転嫁されることが重要とされるのである。
ところで、砂糖消費税及び揮発油税は、酒税と同じ第二種の間接税であるが、右各税の製造者販売価格(税抜)に対する割合は、別表10のとおり、昭和五九年現在において、上白糖(一キログラム)で8.2パーセント、ガソリン(一リットル)で六一パーセントに過ぎず、さらに、第二種の物品税のうち従価税を採用する税は、税率が最低五パーセント、最高が三〇パーセントに過ぎず(物品税法一一条二号、一四条及び課税物品表)単に税率のみを比較しても、酒税に比べて極めて低率なのである。
また、酒類製造者以外の製造者の売上高に占める各税額の割合についても、別表11のとおり、第三種の物品税において、約1.6パーセントから約4.6パーセント、砂糖消費税において、約5.8パーセントから約7.3パーセント、揮発油税において、約5.3パーセントから約13.1パーセントに過ぎず、酒税における約45.7パーセントから約56.9パーセント(別表9参照)に比較すると非常に低率なのである。
したがつて、第二種の物品税や砂糖消費税、揮発油税を納付する製造者と酒類製造者とでは、それらの税負担を消費者へ転嫁できず、みずからが実質的に負担しなければならなくなつた場合の負担の程度は著しく異なるもので、酒税とその他の間接消費税とでは、右転嫁の具体的な重要性の程度が異なるのである。
なお、原告は、別表9ないし11について、焼酎のような税率の低い商品を主として扱つている業者に言及していないこと、自動車製造業者や石油業者の売上高のうちには非課税物品が含まれているので、それを除外して売上高に占める間接税額の割合を比較すべきであることを主張し、被告の右各別表には、その抽出の仕方に問題があると批判するが、右各別表は、各消費税について、代表的な品目ないし製造者を選択したものであつて、その抽出の仕方にはなんら問題がなく、別表9、11については、一定の基準に基づいて順次五社を選定したものであつて、恣意の介入する余地はなく、また、焼酎や合成清酒などの相対的に税率の低い酒類は、その課税移出数量がわずかで、酒税額全体に占める割合も非常に低いため、それらの酒類製造者の酒税負担割合をもつて、代表的な酒類製造者の酒税負担割合を示す例とすることが相当でなく、さらに、自動車製造業者や石油業者の売上高に非課税品が含まれているとしても、納税義務者たる各製造者が実質的に負担しなければならなくなつた場合の当該製造者の経営に与える打撃の程度を問題としているのであるから、当該製造業者の総売上高に占める各消費税額の割合を比較すべきであり、原告の右批判は失当である。
また、原告は、酒類製造者の売上高に占める酒税割合が高いとしても、そのことは酒類販売免許制度を合理化する論拠にならないとして、たばこ専売制度の廃止に伴い、製造たばこの小売販売業につき、許可制が採用された(たばこ事業法二二条一項)ことを指摘する。
しかし、たばこは、日本たばこ産業株式会社のみしか製造できず(たばこ事業法八条)、同社のたばこ小売業者に対するたばこ販売代金は商品の引き渡しと同時に現金又は小切手により決済されるのが通常であり、酒類製造者の同販売業者に対する酒類販売代金が、多額の売掛代金債権として発生することとは全く異なるのであつて、たばこ消費税が円滑かつ確実に消費者に転嫁される仕組みが、その取引形態から備わつているのであり、これと酒税を同一視した原告の主張は失当である。
(4)(イ) 酒類販売業者は、酒類が製造場から移出されてから消費者に渡るまでの流通過程を担つており、酒類代金の円滑な回収を通じて高率な酒税の転嫁を図るという面において酒類製造者と担税者、すなわち消費者を結ぶパイプ役として重要な地位にあり、このことは、酒類販売業者一場当たりに転嫁される年間酒税額が一〇〇〇万円余と多額であることからも容易に推測できる。
file_4.jpgFEAR (RAVER TH) 1 £86008 FE De bat 1758=1094万円
仮に、経営基盤の脆弱な者が酒類販売に参入すると、過度に酒類販売業者が増加し、過当競争が行われた場合には、酒類の取引に混乱を招き、酒類販売業者の経営内容が悪化して酒類製造者の納付すべき酒税の回収が困難となり、ひいては酒税の確保、すなわち国家財政の危機を招くおそれが生ずるのである。
なお、原告は、酒類販売業者の中には大都市の酒類卸売業者もいればD地域の一般小売業者もおり、営業規模は種々異なるのであるから、酒類販売業者一場当たりに換算される年間酒税額一〇〇〇万円の数字に意味がない旨主張する。
しかし、小規模な小売業者も一場として平均しても、なお、一場当たり約一〇〇〇万円という多額の年間酒税額になるとして酒税の重要性を指摘しているのであつて、原告の右主張は失当である。
(ロ) 酒類小売業者は、そのほとんどが中小零細業者であるうえ、他業種に比べ、別表15のとおり、マージン率も高くないため、その粗利益率は、同表のとおり、昭和五五年度17.6パーセントと他の一般小売業者の30.6パーセント(食料品小売業者平均26.9パーセント)に比べて低率であり、しかも現在酒類の需要は、別表13のとおり、伸び悩んでいる状況にあつて、このような状況下において、酒類販売免許制度を廃止すれば、酒類販売業者が乱立し、中小零細業者の存立がおびやかされ、ひいては酒税の確保を危うくし、国民保険衛生の悪化をも招きかねないのである。
なお、原告は、酒類の消費量が決して伸び悩んでいないとして、昭和三一年度と昭和五六年度の酒類の消費量及び昭和三〇年二月末と昭和五五年三月末の酒類小売業の販売場数をそれぞれ比較し、さらに、小売販売場の増加と消費量の増加とは相関関係にあるから、酒類販売免許制度を廃止することにより、酒類の消費量をさらに伸ばしうると主張し、その根拠として、日本と世界各国とのアルコール消費量を比較する。
しかし、酒類は、嗜好品と呼ばれるように、その消費動向は、時と共に変化する社会、経済等の情勢やこれに付随する国民所得の多寡、生活様式の変化等によつて左右されるものであり、また、消費量の多いビールについては、天候等の影響も無視できないところであつて、一概に酒類小売販売場数の増加と酒類の消費量の増加とは相関関係にあるとはいえず、さらに、我が国と諸外国とのアルコール消費量(アルコール分一〇〇パーセント換算)を比較しても、その消費量は、それぞれの国の気候、風土、習慣、歴史、食生活、民族の体質・体格など種々の要素が複雑に作用しうるものであり(例えば、原告引用の表からも明らかなように、上位にランクされているヨーロッパの諸国は、一般的に良質な飲料水に恵まれず、国民の多くがソフトなワイン類やビールを常用しているといわれる。)、諸外国、特にヨーロッパ諸国の酒類消費量が多いからといつて、国民性や気候、風土のほか、生活習慣等の異なる我が国のそれがさらに増大するとの主張は、極めて短絡的なものというべきであり、原告の主張は失当である。
(5) 原告は、主要酒類であるビール、ウイスキーが一部の製造業者の独占供給商品であり、また、清酒の特級及び一級もその大半が大手製造業者の供給するものであるから、酒税の負担、納付に不安はなく、酒税確保のために酒類販売免許制度を設ける正当な理由はない旨主張する。
しかし、ビール、ウイスキーについては、原告の掲名する製造業者が大きい市場占有率を有しているにしても、それらの製造業者以外にも、ビールについて二社、ウイスキーについて約四〇社の製造業者がおり、また、大規模製造業者といえども酒税相当額を酒類代金に転嫁しているのであるから、酒税納付のためには酒類代金が酒類販売業者から円滑に回収されることが不可欠であり、仮に、酒類販売業者に経営基盤の脆弱な者が参入すれば、過度に酒類販売業者が増加し過当競争となり、酒類取引の混乱を招き、酒類販売業者の経営の悪化、ひいては、納付すべき酒税の回収も困難となることは、歴史的事実であつて、原告の主張は失当である。
(6) 酒類は致酔飲料であることから、秩序ある供給を図ることが要請され、酒類販売免許制度は、その派生的効果として、飲酒による事故、アルコール依存症、未成年者の飲酒など種々の社会問題を防止することにおいて社会秩序の維持、国民保健衛生に大きく寄与しているばかりでなく、酒類の価格に関しても、別表17のとおり、他の消費財、サービスに比較して、価格が安定しているのである。
原告は、被告が酒類販売免許制度の目的を飲酒の弊害防止にあると捉えていると曲解して批判するが、酒類販売免許制度の派生的な効果として、右の弊害防止に役立つていると指摘したに過ぎず、原告の主張は的はずれというべきである。
(7) 以上のとおり、酒類販売免許制度は、「酒税の保全」を基本目的にして導入されたものであり、憲法二二条一項の「公共の福祉」に沿うものであつて、営業の自由を制限する正当な目的を有するものである。
(三) 請求原因3(三)は争う。
なお、「酒税の保全」という積極目的のために職業を許可制度にする場合、その制度が違憲とされるためには、その規制の手段・態様において、著しく不合理であることが明白でなければならず、酒類販売免許制度が著しく不合理であると認めることはできない。
次に、被告は原告の主張に対し、以下のとおり反論する。
(1) 原告は、酒税徴収確保の目的を達成するためには酒類製造者又は酒類取引者を免許制度のもとにおくことで足り、酒類販売者は酒税納付義務者でないから、免許制のもとにおく合理性はない旨主張する。
しかし、高率な酒税の納付義務を負担する酒類製造者等は、消費税たる酒税を担税者たる消費者に代わつて納付しているのであるから、酒類が製造者のもとから適正な商品取引の流通過程に乗つて消費者のもとに供給され、もつて酒税が担税者(消費者)に転嫁されなければならないところ、酒類販売者は、酒類製造者と担税者(消費者)を結ぶパイプ役であつて、いわば酒税の間接的な徴税機関といえる重要な地位にあり、酒類製造者としては酒類販売業者から酒類販売代金が確実に回収されなければ納税の負担に耐えられず、したがつて、酒類販売業者の経営の安定を図ること、また、信頼しうる酒類販売業者に販売の任に当らしめることは極めて重要な要請で、酒類販売免許制度は必要かつ合理的な制度なのである。
また、原告は、①酒類製造者が販売先の資力、信用について注意を払い、かつ、その能力があり、物品税を課されている自動車、家電製品、貴金属、毛皮、化粧品などの業界においては物品税徴収に不安を生じていないから、酒税の確保のために酒類販売免許制度まで設ける必要性はない旨主張し、また、②酒税が庫出課税方式(移出課税)を採用し、その結果、酒類製造者が自己の担税能力に応じて庫出数量及び価格を調整できるから、酒税の納付に不安はない旨を主張するが、しかし、原告の①の主張は、酒類販売免許制度の廃止が酒類販売者の増加、その結果乱売を招き、販売代金の回収が円滑でなくなり、ひいては酒税の確保もおぼつかなくなるという歴史的事実を無視するものであり、しかも酒類が自動車、家電製品、貴金属、毛皮、化粧品等と比較して高率の税率が課され、製造業者の売上高に占める税額の割合が極めて高いこと、前記のとおりであつて、酒類以外の商品について物品税等の徴収に不安のないことをもつて、酒税にもそのまま妥当するとはいえず、さらに、原告の②の主張は、酒類製造者が担税者でないのであるから、酒税の転嫁が困難になつて、酒類製造者自らが融資を受けて納付しなければならないという事態は、たとえ滞納率が低下しても間接消費税制度としては正常なものではなく、庫出課税制度は、単に納税義務の発生時期が変わつたに過ぎないのであるから、庫出課税制度を採用したことをもつて、酒類販売免許制度が不要になつたとはいえないのであり、原告の右主張は失当である。
さらに、原告は、納税義務者の資産ないし資金上の安定を図るためにこれと取引する者の営業を許可制度のもとにおくことが許容されるなら、この世の中で許可制度の対象にならない職業はなくなるから、酒類販売免許制度が憲法二二条一項の許容しないものである旨主張する。
しかし、原告の主張は、酒税が他の物品税、消費税と比較して高率の税率を課され、国家財政において重要なものであること、また、酒類が国内の原料によつて容易に醸造でき、そうでないとしても酒類製造者が貯蔵中のアルコール分の蒸発等による自然欠減を誤魔化したりして、簿外の酒類を生み出しやすい性格の商品で逋脱の可能性が高いこと、さらに、砂糖や石油と異なりその原料を国内で調達しうるため、原料の通関実績によつて製造実績を把握できないことなどの酒税及び酒類に特有の性格から酒類販売免許制度が設けられていることを全く無視して、他の課税領域まで許可制度を拡大した立論を行うものであつて、論理の飛躍であつて失当である。
(2) 酒類販売免許制度は、酒税の滞納率を低下させるものである。
すなわち、酒類販売免許制度は、昭和一三年当時に酒類販売業者の乱立により市場が混乱し酒類販売業者の倒産が相次いだため、酒類代金の回収に困難を来たし、酒類製造者の貸倒れが増加し、酒税の滞納割合も非常に高い状況にあつたので導入されたのであり、その結果、別表16のとおり、酒税の滞納が他の税目に類をみないほど小さく、高率な酒税が効率的、かつ、安定的に確保できているのである。
原告は、第二種の物品税や砂糖消費税、揮発油税の各滞納率が、酒税の滞納率と同様に低いことをもつて、酒類販売免許制度が「酒税確保」に役立つていない旨主張するが、前記のとおり、酒類製造者が負担する酒税の納付額がその他の製造者の負担する各消費税の納付額に比べて極めて多額であることを考慮すると、それにもかかわらず、酒税の納付状況が他の間接消費税と同様ないしはそれ以上に良好であることは、むしろ、酒類販売免許制度が酒税の転嫁に役立つていることを示すものというべきであつて、原告の主張は失当である。
また、原告は、酒税法が酒類製造免許制度を採用しているために酒税の滞納率が低いのであつて、酒類販売免許制度の効果ではなく、このことは、酒類販売免許制度の導入以前から酒税の滞納率が低かつたことから明らかである旨主張するが、しかし、酒税が酒類販売者を通じて担税者(消費者)に円滑に転嫁されない限り、正常な取引とはいえず、酒税の滞納が生ずる可能性は存するのであり、酒税の円滑な転嫁のためには、酒類製造者に対する規制のみでは十分ではなく、酒類販売者に対する規制により酒税の転嫁を完全なものとすることにより、酒税の滞納率が低下するのであり、また、酒類販売免許制度を導入した昭和一三年当時に酒税の滞納率が低かつたのは、酒類製造者が昭和六年二月から政府の斡旋によつて銀行から酒税の納付資金の融資を受けることができるようになつたことや昭和一〇年三月に酒造組合法の改正によつて、酒造組合を通じて政府資金を低利で借りられるようになつたためであり、酒類販売者を通じた酒税の転嫁が円滑に行われていたからではないのであつて、原告の主張は失当である。
(3) 酒類販売免許制度は、酒税の逋脱を防止するために合理的で、かつ、必要な制度である。
酒税は、その税率が極めて高く、その逋脱酒による国の損失額も大きいうえ、酒税を含んだ酒類に比較してその小売価格を低減できるので、その流通性は極めて高く、逋脱が多発した場合は市場の混乱する危険性は極めて高く酒税制度の崩壊につながりやすい。
他方、酒類は、同種の原料を国内で容易に入手でき、また、その製造も容易であるため、酒類製造者が酒類を製造することもそれ程困難ではなく、そのうえ、酒類は貯蔵中に蒸発等の欠減を生ずるが、その欠減割合には貯蔵場所、貯蔵容器等により差異があり、かつ、酒類は容器に充填する前に水を加えて所定のアルコール分にするのが通常だが、製造場から移出する際に、帳簿上のアルコール分未満で、最低限のアルコール分を下回らない程度に水を加え、帳簿上の数量を越える部分を簿外と処理することも可能であり、このように極めて容易に酒類の無免許製造や簿外の酒類を生み出しうるのである。
このような状況を考慮すると、酒税法が、酒類製造者だけでなく、酒類販売業者に対しても規制を加え、もつて、酒税の逋脱防止に遺漏なきを期していることには合理性があり、酒類販売免許制度により、酒類の販売体制を健全化し、それによつて、逋脱防止のために酒類製造者に課している記帳義務(酒税法四六条)など各種の義務が的確に履行されることを担保しようとするものであるから、それが逋脱防止制度としても合理的で、必要的な制度である。
なお、原告は、酒類製造者に種々の義務が課せられていることを指摘し、酒税法の酒類製造業者に対する規制が極めて厳しいものであるから、現実には酒類製造者が酒税を逋脱しうる可能性は殆どない旨主張するが、しかし、右主張したとおり、酒類製造者に対し課している種々の義務のみでは、逋脱行為を十分に防止し得ないものであるから、酒税法は酒類販売免許制度を通じて酒類の販売体制の健全化と共に、酒類販売業者に対しても種々の義務を課し、いわゆる逋脱酒の流通を困難ならしめ、酒類製造者に対する規制を実行あらしめ、酒税の逋脱防止に遺漏なきを期しているのであつて、原告の主張は失当である。
また、原告は、①酒類販売免許制まで導入しなくとも、営業開始申告義務や記帳義務などの規制によつて、逋脱防止の目的を達しうるとか、②逋脱防止目的は、酒税逋脱に加担する人物並びに販売場の排除という単純な公式で達成されるものでないとか、③物品税法上の第一種物品である宝石類の販売者については、販売業者証明制度が導入されたにとどまり、免許制度にまで至つていないことを考慮すれば、逋脱防止のためといえども販売店を免許制にすることは今日できない旨を主張する。
しかし、酒類販売免許制度による酒類の販売体制の健全化と酒類販売業者に課した種々の義務による酒類の販売体制の監視とは、両者が相まつて、酒税の逋脱事犯の発生を最小限度に食い止めるため機能しているのであつて、後者のみでその目的を達成できるとの原告の①の主張はなんら根拠がなく独断に過ぎない。
また、原告の②の主張は、被告が酒税逋脱に加担する人物並びに販売場の排除により逋脱防止の目的を達成しうると主張していることを前提にしたものであるが、被告はそのような主張をしたことはなく、全く的はずれの主張である。
さらに、原告の③の主張は、宝石類に対する物品税の課税方式が酒税と異なり、小売課税方式であつて、担税者である消費者と直接取引する小売業者が納税義務者となるため、その税負担の転嫁は酒税に較べて容易であり、酒類販売免許制度の主たる目的を基礎づけるような事情はないうえ、宝石類に対する物品税の税額及び税率は酒税に較べて著しく低く、その逋脱行為を生ぜしめる弊害の大きさも酒税の場合とは較べものにならず、宝石類と酒類とを同列に論じることは失当である。
(4) 以上のとおり、酒類販売免許制度は、「酒税の保全」という正当な目的を達成するために合理的、かつ、必要的な制度であり、憲法二二条一項に反するものではない。
(四) 請求原因3(四)は争う。
酒類販売免許制度の法的性格は、行政官庁である税務署長の行政処分であつて、一般に禁止している酒類の販売を特別の要件を備えた者に対し許可(解除)しようとするものであり、それは免許を受けた者に対して新たな権利を設定するものではなく、単に不作為義務を解除するにとどまるものと解されるが、酒税法一〇条の規定は、酒類販売免許の付与を原則とし、拒否できる場合の要件について規定しているのであり、また、免許制度の運用に当たつては、消費者の利便についても十分に考慮することとしており、現在、別表12のとおり、酒類の販売場(一般小売)は一七万場(約二〇〇世帯に一店舗)もあり、薬局及び薬店、野菜・果実小売店、鮮魚小売店、食肉小売店など他の業種に比べてかなり多い店舗数になつている。
他方、酒類販売免許制度は、前記のとおり、酒類という商品の特異性、酒税の国家財政における重要性等からして、「酒税の保全」に必要で合理性のある制度であるばかりでなく、これに付随して、飲酒に伴う社会問題(飲酒運転による事故、アルコール依存症、未成年の飲酒等)を防止し、さらには、酒類の価格安定にも貢献しているのである。
そうすると、酒類販売免許制度の人権規制による損害とそれによつて得られる利益との間に著しい不均衡あるとは到底いえないのである。
なお、原告は、酒類販売免許制度の合憲性審査について、その人権規制による損害と得られる利益との比較考慮を要する旨主張するが、前記のとおり、右制度は租税政策の一環として導入された制度であり、積極目的による人権規制なのであるから、右制度が一応の正当な目的を有する以上は、立法府の裁量を尊重して著しく合理性を欠くことが明白でない限り合憲と判断されるのである。
また、原告は、その比較考慮において、酒類販売免許制度による酒税確保の効果が僅少であるとするが、その判断は前記において反論してきたとおり、独断と短絡的な評価であり、ことさらに右制度の効用を低く評価するものであつて、到底認めえないものであり、その判断の前提において失当である。
第三 証拠<省略>
理由
一請求原因1(本件差押処分の存在)及び2(権限の承継)の各事実は当事者間に争いがない。
二そこで、酒税法九条一項所定の酒類販売免許制度が憲法二二条一項に反するかについて判断する。
1 憲法二二条一項は、職業の開始、継続、廃止という職業選択の自由のみならず、職業活動の内容、態様という職業活動の自由も保障していると解されるところ、酒税法九条一項は、酒類の販売業をしようとする者は、政令で定める手続により、販売場ごとにその販売場の所在地の所轄税務署長の免許を受けなければならない旨規定して、酒類販売免許制度を設けているのであるから、右制度が憲法の右規定が保障する職業活動の自由を制約するものであることは明らかである。
ところで、憲法は、国の責務として積極的な社会経済政策の実施を予定し、個人の経済活動の自由に関しては、個人の精神的自由等に関する場合と異なり、右社会経済政策の実施の一手段として一定の合理的規制措置を講ずることを予定し許容していると解される。そして、社会経済政策上の積極的な目的のために個人の経済活動の自由に対してされる法的規制措置については、その規制目的が公共の福祉に合致すると認められる限り、その具体的内容及びその必要性、合理性については、第一次的には立法上の問題として、立法府の政策的、技術的な裁量判断を尊重するのを建前とし、裁判所がその合憲性を判断するに際しては、立法府がその裁量権を逸脱し、当該法的規制措置が著しく不合理であることが明白である場合に限つて、これを違憲として、その効力を否定することができると解すべきである(最高裁判所昭和四七年一一月二二日大法廷判決・刑集二六巻九号五八六頁参照)。
酒類販売免許制度は、酒類に酒税を課すことを目的に制定された酒税法によつて設けられた制度であつて、税務担当機関である税務署長がその免許許否の権限を有し、酒税の保全上需給の均衡を維持する必要がある場合に右免許を拒否し(一〇条一一号)、或いは免許に条件を付することができる(一一条一項)ものとし、酒類販売業者に安定した資力と経営の基礎の健全さを要求し(一〇条六号、一〇号)ている。また、<証拠>によれば、酒類販売免許制度は、酒税の徴収を確保することを目的とし、昭和一三年二月一日酒税法改正案として帝国議会に提案され、その議決を経て導入された制度であることが認められる。
このように、酒類販売免許制度が、酒税の確実な徴収を図るために設けられたもので、それ自体は、租税の賦課徴収権の直接の行為に該るものではなく、租税政策自体からみれば間接的な制度というべきものであるから、その合憲性を検討するにおいても、直接に、積極的な社会経済政策の遂行を目的とする制度の合憲性を判断する場合と同一に考えることができない。なお、酒類販売免許制度に、飲酒に起因する交通事故、アルコール依存症、未成年者の飲酒等を防止することの派生的効果があるとしても、これをもつてこの制度の直接的な目的と解することはできない。
しかし、国の財政に寄与し、国が行う諸施策の実現に重要な財源を構成するものとして酒税制度が設けられている以上、酒税制度を、その徴税を確実にするための措置、方策と切り離して考えることはできないところであるから、徴税確保のための措置として設けられれている酒類販売免許制度が、必要性と合理性を有する限りにおいて、個人の経済活動の自由を制限する結果を生じることが許容されるものというべきである。
結局、以上によると、酒類販売免許制度の合憲性については、酒税制度に合憲性が認められるというだけでは十分でなく、酒税制度の重要性及びその徴税確保との関連において、制度の必要性、合目的性、不可代替性の有無及び個人の経済活動の自由に与える制限とを比較衡量して、合理性、相当性を有するか否かによつて決すべきものと解するのが相当である。
2 そこで、右の観点から酒類販売免許制度の合憲性について検討する。
酒類販売免許制度の主たる目的が酒税の保全を図るにあることは、前記のとおりであり、そうであるとすれば、同制度が酒税の確保により国民生活の安定、社会・経済の発展に寄与することも明らかである。
そして、このような目的のもとに酒類販売免許制度が設けられたのは、酒税が極めて税率の高い間接消費税であり(このことは、酒税法二二条の二に規定する従価税の税率と物品税法別表の税率を対比することによつて明らかである。)このような高率の税の確保につき、酒類販売業者が納税義務者である酒税製造者と担税者である消費者とを結ぶ重要な役割を担つていることにかんがみ、酒類の流通過程を通じて酒類代金の回収を円滑にし、酒税の消費者への転嫁を容易ならしめ、酒税収入を安定かつ効率的に確保することを企図したことにあると理解されるから、酒類販売免許制度には酒税の徴税確保という目的との間に密接な関連性とその必要性及び合理性を是認することができる。
また、酒税法は、酒類販売免許の申請に対しこれを付与するのを原則とし、例外的に事由を限定して、これに該当する同法一〇条各号所定の事項に該当する場合に酒類販売の免許を付与しないこととしている(酒税法一〇条各号)のであつて、酒税保全の目的に反し、不当に職業選択の自由を制限するものとも解しえず、立法府が裁量権を著しく逸脱しているともいえないのである。
以上について、さらに原告の主張に対する判断をも含めて詳述すると次のとおりである。
すなわち、
(一) <証拠>によれば、昭和五七年度の租税及び印紙収入の予算額が、総額三七兆三八九八億円(補正後の金額は三一兆二四三八億円である。)で、酒税は所得税、法人税に次いで第三位の一兆九六一〇億円(補正後の金額は、一兆七六七〇億円である。)であること、昭和五七年の酒類販売場数は、一七万三四〇八箇所であることが認められ、昭和五七年度の酒税の全税収に占める割合が約5.6パーセント(補正後の金額による。)に及び、間接消費税の中では最もその税額が大きいもので、国家の諸施策を行う上で貴重な財源となつており、また、酒類販売場一箇所当たりの酒税負担が平均において、約一〇一八万円余の高額にのぼることから、酒類販売業者の酒税確保の役割も重要なものとなつている。
なお、原告は、酒税が国税の中で物品税、揮発油税と変わらない程度の割合しか占めていないから、今日重要なものとはいえない旨主張(請求原因三(二)(3)(イ))するが、国税に占める右数額及びその割合に照らすと右主張は当を得ないものというべきであり、このような額の国の収入を酒税によるべきものとしてこれの確保に当たるか、他の財源に求めるかは高度な国の政策に属し立法府の裁量に属することであつて、ここで酒税制度の当否を論ずることはできない。
(二) また、<証拠>によれば、酒類販売業に免許制度が採用されていなかつた昭和一三年以前には、酒類販売業者が乱立し、業者間の販売競争が激化し、売行不振から熾烈な乱売競争を生じ、販売業者の倒産、名義変更が年間を通じて全業者数の三割にも達し、酒類製造者もその影響を受けて売掛代金の回収に多大な困難を来たし、倒産、廃業する業者が激増し、その結果、酒類製造者による酒税の滞納が招来されることとなつたため、このような事態を克服し酒税収入を確保するため酒類販売免許制度を立法化して、同年四月一日から実施し、納税者である酒類製造者から酒税を安定的かつ効率的に確保するために酒類販売業者を免許制度のもとにおき、経営能力、資力を確保して酒税の消費者への転嫁を円滑にし、これを通じて酒税の確保、さらには酒税制度の維持を図つた経緯が認められるのであり、その立法当時において、酒類販売免許制度の必要性は大きかつたものというべきである。
そして、<証拠>によれば、ウイスキー又はビールの製造者の売上高に占める酒税及び物品税の比率は、約五〇パーセント前後に及んでおり、他の自動車製造業者、電気関係製造業者、砂糖製造業者及び石油製造業者の負担する物品税、砂糖消費税ないし揮発油税の売上高に占める割合と比較しても極めて高率であることが認められ、今日においても酒税の税率が極めて高いため、酒類製造者の負担する酒税を安定的かつ効率的に消費者に転嫁しなければ、酒税の徴収に支障の生ずることは右立法当時と変わりなく、また、酒類が比較的容易に製造でき、その原料の調達も国内において容易であること(このことは、公知の事実であり、とかく家庭における醸造が容易に行われ勝ちであることからも明らかである。)から、酒税の課されていない酒類、いわゆる密造酒が販売されると、酒税の税率が前記のとおり極めて高いため、酒税を負担した酒類に比較して密造酒が極めて廉価に販売される結果を招き、酒税を負担した酒類が淘汰され、酒税制度自体が崩壊する蓋然性を今日でも否定できないのであり、酒税確保のために酒類販売業者を免許制のもとにおき、密造酒の販売を阻止するとともに、酒類製造者が販売代金を安定的かつ円滑に回収し得るようにする措置が必要であり、酒類販売免許制度は、この要請をみたすものとして、今日においてもその必要性と合理性を備えるものというべきである。
なお、原告は、酒税の小売価格に占める割合が高率でなく、また、酒類製造業以外の製造業者にしても、課税物品だけの売上高と物品税等の割合を比較すると酒類製造者の酒税負担率が特に高率であるとはいえない旨主張(請求原因3(二)(3)(ロ)(ハ))するが、酒税の納税者は酒類製造者であつて、製造者の販売代金から酒税を支払うのであるから、酒類の製造価格と酒税との比率を検討すべきもので、卸売業者及び小売業者のマージン等を加えた小売価格との比較には意味がなく、また、酒類製造者の資力が酒税の担保になるのであるから、その者の売上高に占める酒税割合を考慮しなければ、酒税確保の手段を検討するには相当でなく、原告の右主張は失当である。
また、原告は、税率が最も高いたばこについては、たばこ事業法の改正に際して、税収確保を目的として小売業者を許可制にするとの論議を行つていないから、今日税収確保の目的で酒類販売業者を免許制にすることはできない旨主張(請求原因3(二)(3)(ハ))するが、<証拠>によれば、日本たばこ産業株式会社は小売業者に対し、商品であるたばこの引き渡しと引き換えに現金又は小切手により商品代金を受領する取引形態をとつていることが認められ、掛け売り等の信用取引を行わず、小売業者の資力、信用等に影響されないで販売代金を回収しているのであるから、酒類の取引形態とは異なるのであつて、たばこの販売と酒類販売を比較すること自体が失当であり、原告の右主張はその前提を欠き失当である。
さらに、原告は、酒類製造者のうち、酒税の大半を納税しているウイスキー、ビール、有名銘柄の清酒の各製造者が大企業であるから、酒税の徴収上の不安がない旨主張(請求原因3(二)(4)(ハ))するが、前記のとおり、ウイスキー、ビールの製造者はその売上高の約五〇パーセントが酒税及び物品税であり、いかに大企業とはいえ、販売代金が円滑に回収できることを前提とせずに、その売上高の半額にあたる資金(<証拠>によれば、昭和五九年度の一年間における酒税及び物品税の金額は、麒麟麦酒株式会社が約六〇〇九億円、サントリー株式会社が約四四八八億円、サッポロビール株式会社が約一九六六億円、朝日麦酒株式会社が九七一億円、ニッカウイスキー株式会社が約四八三億円にそれぞれのぼることが認められる。)を容易に調達できるとは考え難いうえ、相当長期にわたつて企業が存続していくことを前提とする以上、このように巨額の納税資金を毎年調達するためには、販売代金の回収が安定的かつ円滑になされることが不可欠なのであり、酒類販売免許制度を否定する根拠とはなり得ない。
(三) 以上のとおり、酒税が国税に占める割合が高く、その税額も巨額であることから、酒税は国家の財政運営において重要な地位にあり、その徴税に遺漏があるときには国家財政に重要な支障を生じかねない恐れが存するのであり、また、酒類製造者の納税する酒税金額が極めて高額で売上高に占める割合も高く、販売代金の回収が滞ると経営に破綻を生じて、酒税の滞納をもたらす恐れがあることは容易に考えうるところであるから、酒税の納税義務者である酒類製造者から担税者である消費者に酒税が円滑に転嫁される必要があり、そのためには納税者と担税者を結ぶ役割を担つている酒類販売業者が、酒税の徴税に関し重要な役割(酒類販売場一箇所当たりの平均の酒税負担金額が約一〇〇〇万円以上になることからも、その役割の重要性が明らかである。)を果たす必要がある。さらに、酒類が比較的容易に密造しうる特質を有する上、酒税の税率が高率であるため密造酒の市場流通性が高く、密造酒の横行により酒税制度自体が崩壊する恐れがあり、これを防止するためには、酒類販売業者に密造酒の販売を行わせないように規制する必要がある。これらの酒税及び酒類の特質、酒類の取引形態、納税義務者である酒類製造者の事情等を考慮すると、酒類販売免許制度の必要性及び合理性を肯認することができる。
なお、原告は、酒税の納税義務者は酒類製造者であり、酒類の販売業者まで規制して酒類製造者を保護する必要はなく、酒税の確保は酒類製造者の免許制で十分である旨主張(請求原因3(三)(1))するが、しかし、酒税の額が極めて高額で、売上高に占める率が高いことを考えるならば、ひとり製造業者の資力、経営基礎のみを問題としてこれを規制するだけでは足りず、担税者である消費者からの円滑かつ安定した代金回収と、密造酒を排除して安定した売上げを図るのでなければ酒税の確保に耐し得ないことは明らかなところというべきであり、仮に、酒税確保の必要から酒類製造業者に強大な資力を要求するならば、その結果として酒類製造を著しく制限する結果となり、かえつて密造酒の横行や消費者の便宜を損なうことになるのであつて、酒類製造免許制度のみをもつて足りるとする主張は採用のかぎりでない。
また、原告は、酒類販売免許制度が酒税の滞納率を低下させているものではない旨主張(請求原因3(三)(2))するが、酒類販売業者に免許制度が採用された昭和一三年四月一日以前は、酒類販売業者の乱立、売行不振から乱売競争の激化、そして、酒類販売代金の回収が困難となり酒類製造者の倒産、廃業が激増し、その結果、酒税の滞納が続発し、これを克服する措置として酒類販売免許制度が設けられたのであることは既に判示のとおりであり、現在において、昭和一三年四月一日以前と酒類販売をめぐる事情が特に著しく変化したとは認めるに足りる証拠はないから原告の右主張は採用できない。
さらに、原告は、酒税法が、納税義務者である酒類製造者を免許制度のもとにおき(七条)、製造場ごとに毎月ごとの納税申告書提出義務(三〇条の二)、製造等に関する事項の帳簿記載義務(四六条)、製造場の位置及び製造設備等についての申告義務(四七条)、質問・検査・検定受忍義務(四九条、五三条)、製造方法等について承認を受ける義務(五〇条)等を課し、それらの懈怠については罰則を規定し(五四条以下)、さらに酒税保全の必要に応じて担保の提供を命じ得る(三一条)など、酒税の保全のための具体的措置も講じているのであるから、酒類製造者が酒税を逋脱する可能性はほとんどなく、酒類販売業者まで免許制におく必要はない旨主張(請求原因3(三)(3))するが、被告が主張(請求原因に対する答弁3(三)(3))するように、酒類の特質からして容易に密造酒が製造され、それが市場において廉価に販売され、酒税制度自体の崩壊をもたらす恐れが常に存し、これを防止するためには酒類製造者のみの規制では十分な効果を奏しないからこそ酒類販売免許制度を導入して、酒税の逋脱防止を図つていると認められること前判示のとおりであるから原告の右主張は失当である。
3 以上のとおりであつて、酒類販売免許制度は、酒類製造者の販売代金回収を安定的かつ円滑に行わせ、それによつて酒税の保全を図り、併せて密造酒の横行による酒税の逋脱を防止し、国家財政において重要な地位にある酒税制度を支える措置であつて、酒税の保全という目的に密接に関連する制度であつて、その必要性と合理性の範囲を超えるものではないというべきであり、酒類販売免許制度により不当に職業選択の自由を制限しているとは認め得ない。
なお、本件において、原告は、酒税法一〇条所定の免許の要件(消極要件)のいずれかに該当するために、酒類の販売免許の申請をしたにもかかわらず、同免許が得られなかつたとして争うのではなく、単に、酒類販売業の免許制度自体を違憲として争うものであるから、右免許の要件を個別にとり上げてその合憲性について具体的に判断を及ぼすことはしないこととする。
以上の次第であるから、酒税法九条一項の規定は職業選択の自由を保障する憲法二二条一項の規定に違反するものではなく、したがつて、酒税法九条一項の規定に違反するとしてなされた本件差押処分も違法、無効ということはできない。
三よつて、原告の本訴請求は、理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官川上正俊 裁判官西田育代司 裁判官竹田光広)
別紙物件目録(一)〜(三)<省略>
別表一 ビール業界のシェア<省略>
二 ウイスキー業界のシェア<省略>
三 昭和五〇年〜五五年清酒五〇社の階層別出荷数量<省略>
四 清酒大手メーカー一〇社のシェア<省略>
五 租税滞納率推移表<省略>
六―一 各国の酒税制度の概要<省略>
六―二 〃 <省略>
七 酒税の税率<省略>
八 (五九年八月当時)製造者販売価格(税抜)に対する税額割合<省略>
九〜一一<省略>
一二 小売店舗場数<省略>
一三 酒類消費数量の推移<省略>
一四 酒類小売業免許付与件数<省略>
一五 小売業者の粗利益率<省略>
一六〜一七<省略>